06.11.27

論文

パウダースペースホルダー法による炭化ケイ素系耐熱複合材料の開発

パウダースペースホルダー法による炭化ケイ素系耐熱複合材料の開発



機械学会年次大会2006 口頭発表

緒 言
再使用型宇宙輸送システムの実現を阻む要因の一つに,大気圏再突入時に熱損傷を受ける空力加熱現象があり,それに耐え得る信頼性の高い超耐熱材料の開発が必要である.炭化ケイ素(SiC)は高温域で優れた力学的特性と化学的安定性を有することから耐熱材料として注目され,SiC繊維強化複合材料の開発が進められている.しかし,SiC前駆体ポリマーをSiC繊維に含浸・焼成により複合材料を製造するポリマー含浸焼成(PIP)法では,回避不能なクラックや内部空孔などの初期欠陥が発生し,特性の低下やバラツキ増大の主因となる.一方,著者らはバインダと金属粉末を混合して得られる金属粉末射出成形(MIM)の原料に気孔形成材を添加し,成形後に脱脂・焼結を行い,高精度なマイクロポーラス金属部品を得るパウダースペースホルダー(PSH)法を開発した[1].このPSH法をSiCのPIP工程に適用し,SiCマトリックスを多孔質化することを提案した[2].SiCマトリックスに微細な気孔を意図的に均質に分散させることにより①大幅な軽量化と遮熱性の実現②SiC前駆体ポリマー焼成時の分解ガスの発生や収縮に起因する亀裂欠陥形成の低減③ポリマーの収縮を球状の空孔形成で吸収させることによる応力集中の低減,が期待できる.最終的には,PSH法により作製したマイクロポーラス構造を有するSiCマトリックスを繊維強化し,SiC繊維強化SiC多孔質複合材料を得る.
本報では,SiC前駆体ポリマーに添加する気孔形成材の粒径および配合割合を種々変化させて作製したSiCモノリスの,多孔質構造の影響について調査した.得られたSiCモノリスの外観や内部構造の観察から,SiC多孔質モノリスの作製条件の最適化を行った.