05.11.17

論文

日刊工業新聞[工業材料]に掲載されました。

マイクロ多孔質構造が段階的に変化する傾斜機能多層金属の開発

日刊工業新聞[工業材料]10月号

概要:
多孔質材料は,その構造の特質から軽量かつ高い比表面積を有することが特徴である.多孔質(ポーラス) 金属は,多孔質ポリマーに比べて耐熱性および力学的特性に優れており,また多孔質セラミックスよりも高延性で高い電気・熱伝導性を有している.そのため,各種フィルター,ヒートシンク,電極および反応触媒など,近年多方面からの要望が高まっており,さらなる高機能化が求められている.ポーラス金属は,主として輸送機器や建造物の衝撃や騒音吸収のための構造材料の用途に対して,鋳造,発泡および中空金属球の焼結など多様な製造法が開発され,すでに実用化されている[1].一方,フィルターや触媒およびインプラントなどの用途に対しては,鍍金,溶射や圧粉焼結など様々な製造法が存在する.しかし,これらの多くは二次加工が必要な素材の提供に留まり,ネットシェイプによる製造は困難である.加えて,空孔径や空孔率の範囲は限定され,それらの制御は困難である.とりわけ,様々な金属材料に対して,マイクロサイズのポーラス構造を有し,かつ複雑形状の金属部品を量産することは容易ではない.そこで,筆者は金属粉末射出成形(Metal Injection Molding, MIM)の製造プロセスに,パウダースペースホルダー法を適用させることにより,高機能な多孔質金属材料の製造法を確立した[2-4].本稿では,筆者が開発したパウダースペースホルダーMIM法を用いて,マイクロ級の多孔質構造が段階的に変化する傾斜機能多層金属の製造法[5,6]について記述し,その試作事例を紹介する.