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07.12.27
論文
マイクロポーラス構造を有する炭化ケイ素系耐熱複合材料の開発
マイクロポーラス構造を有する炭化ケイ素系耐熱複合材料の開発
COM講演論文集 巻:36 ページ:215-218
概要:
国際宇宙ステーションの完成やペースシャトルの引退など,航空宇宙分野の計画において,再使用型宇宙輸送システムの開発が必要とされている.しかしながら,その実現を阻む要因の一つに,大気圏再突入時に機体が熱損傷を受ける空力加熱現象が挙げられ,それに耐え得る信頼性の高い超耐熱材料の開発が必要とされている.炭化ケイ素(SiC)は高温域で優れた力学的特性と化学的安定性を有することから耐熱材料として注目され,SiC繊維強化複合材料による耐熱タイルの開発が進められている.しかし,SiC前駆体ポリマーをSiC繊維に含浸・焼成により複合材料を製造するポリマー含浸焼成(PIP)法では,製造工程上回避不能で,発生箇所や規模が予測不能なクラックや内部空孔などの初期欠陥が発生し,特性の低下やバラツキ増大の主因となっている.そのため,欠陥があることを認識した上で使用箇所や使用方法を工夫して利用するか,もしくは欠陥をいかに減少させるかという方向で開発が進められているに留まっている.
著者らは,バインダと金属粉末を混合して得られる金属粉末射出成形(MIM)の原料に,気孔形成材を添加し,成形後に脱脂・焼結を行い,高精度なマイクロポーラス金属部品を得るパウダースペースホルダーMIM (PSH-MIM)法を開発した.気孔形成材の粒径や配合割合を種々変化させることにより,多孔質材料の気孔径や気孔率を広い範囲で制御可能であり,これにより開気孔構造と閉気孔構造を選択して製造できる.また,本製造法は多様な材質に対して適用が可能であることに加え,傾斜機能多孔質構造とすることも可能であり,材料と構造をそれぞれ複合化させることに適した製造法である.さらに,複雑な形状の多孔質部品を高い寸法精度でネットシェイプ製造できるといった特長も有する[1].
本研究では,PIP法により製造されるSiC/SiC耐熱複合材料の欠陥減少と信頼性の向上を主たる目的に,PIP法にPSH法を適用することにより,マイクロポーラス構造を有するSiC/SiC耐熱複合材料を製造することを提案する.多孔質SiCマトリックスの欠陥の低減に注目して健全なマトリックスを得る工程と材料条件の最適化を検討した.SiC前駆体ポリマーに添加する気孔形成材の粒径および配合割合を種々変化させて作製した試験片の外観や内部構造の観察,収縮率の測定を行うことにより評価した.さらに,繊維強化材との複合化を試行し,その可能性を確認した.
PSH法をSiCのPIP工程に適用し,SiCマトリックスを多孔質化する製造法をパウダースペースホルダー・ポリマー含浸焼成法(PSH-PIP法)と称する.Fig.1に示すように,PSH-PIP法はSiC前駆体ポリマーに気孔形成材を添加し焼成することにより,気孔形成材が分解して気孔を形成し,前駆体ポリマーが多孔質構造を保形して硬化し,SiCモノリスを得る.SiCマトリックスに微細な気孔を意図的に均質に分散させることにより,①SiC前駆体ポリマー焼成時の分解ガス発生および収縮に起因するクラックや内部空孔などの欠陥形成の低減,②ポリマーの収縮を球状の気孔形成で吸収させることによる応力集中の低減,③大幅な軽量化と遮熱性の実現,④マトリックスの多孔質化による柔軟性の付与により,制御困難な繊維強化材表面の滑り層の低減などの効果が期待できる.最終的に,PSH法により形成したマイクロポーラス構造を有するSiCマトリックスをPIP法により繊維強化し,SiC繊維強化多孔質SiC複合材料を得る.