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09.08.17
論文
MIMにより製造した超小型歯車の精度評価
MIMにより製造したSUS630製モジュール0.07mm超小型歯車の精度評価
粉体および粉末冶金/56 巻 (2009) 5 号
緒 言
歯車は動力の伝動や変換,位置決めなどに広く用いられており,その加工精度が装置の性能に影響を及ぼすため,非常に重要な機械要素部品である.近年,各種機器の軽量小型化と高性能化のため,機械加工では製造困難な形状や材質の歯車に対する期待が高く,低コストかつ高い寸法精度で量産可能な製造技術が求められている.一般に,汎用サイズの歯車の精度はマスターギヤを用いた噛み合い検査や接触式の形状測定により評価されるが,小型歯車の場合はマスターギヤの製造が容易ではなく,また接触による歯の形状測定が非常に困難である.そのため,レーザーを用いた非接触式形状測定や画像処理を援用した新たな評価方法の適用が期待されている.しかし,現存の歯車精度の規格(JIS B 1702-1(1998))はモジュールがm=0.5mm以上の歯車を対象としており,さらに小モジュールの歯車は規格外である1-2).
一方,金属粉末射出成形(Metal Powder Injection Molding,MIM)は,射出成形と粉末冶金を合わせた複合の製造技術であり,機械加工が困難な材質および三次元複雑形状の金属部品の量産性に優れている3).筆者らは,これまでMIMのマイクロ化に伴う各工程での課題を克服するため,マイクロ金属粉末射出成形(Micro Metal Powder Injection Molding,μ-MIM)に特化した原料の選定および調合,金型設計,射出成形条件および脱脂・焼結条件の最適化に加え,それらの評価方法について研究し,超小型MIM部品の量産化の実現に至っている4-6).さらに,MIMにマイクロシステム技術やMEMSなどの半導体製造工程を利用した超精密加工技術を利用することにより,マイクロ犠牲樹脂型インサートMIM プロセスを開発し,上記の超精密加工技術の補完技術として有効な製造法であることを提案している7).
μ-MIMは高強度で高精度が要求される超小型歯車の製造に適していると思われるが,MIMは多量のバインダを用いるため,射出成形時の型内での流動が不安定となる傾向があり,焼結時の収縮が大きいため,機械加工と同等およびそれ以上の寸法精度を保証することは容易でないとされてきた.そこで,本研究ではステンレス鋼製でモジュールm=0.07mmの超小型遊星歯車をμ-MIMにより製造し,その主要歯車の1つである遊星平歯車(歯数z=24,ピッチ円直径d=1.68mm)の精度の評価を試みた.MIMの製造工程における歯車の寸法および精度の変化を調査するため,金型,成形体および焼結体,さらに熱処理後の歯車の断面観察を行い,画像処理により歯の寸法および形状測定を行った.これらの測定結果より,MIMの各工程での歯の形状誤差から歯車の精度等級を求めた.加えて,歯車の硬さや組織観察により,μ-MIMにより製造された超小型歯車の品質を確認した.