09.09.21

論文

遠心成形法によるナノスケール粉末を用いた微細転写挙動に関する研究

遠心成形法によるナノスケール粉末を用いた微細転写挙動に関する研究



成形加工シンポジア2009 口頭発表

概要:
ここでは,MIMプロセス以外で金属粉末の微細転写成形が可能か,またはその適用可能性を調査検討したい.第4章および第5章でも述べてきたが,MIMの微細転写において転写特性を左右するのは原材料である金属粉末の粒径または粒度分布であることはこれまでの調査結果でわかっており,構造体のスケールに合わせた粉末の使用,または焼結温度のコントロールが重要である.しかしMIMの場合,金属粉末が極微粉になると,射出成形するためのバインダ添加量が大幅に増加する傾向にある.粒径がサブミクロンまたはナノオーダーにおけるバインダ添加量は,表面積との関係で極めて大きな量になる.それゆえ,非常に粗密な成形体が作製され,脱脂工程において形状保持が困難になる.それぞれ成形体と脱脂体を示すが,成形体では転写性の良い構造体が並んでいるが,これを脱脂すると構造形状を保持できる金属粉末の絶対量が不足しているため,ほとんど構造体が形成されていない様子がわかる.仮に,ナノスケールを有する金属粉末をMIMに適用したくても,射出成形工程での流動性を確保するためのバインダ量が大幅に増加するため,成形は可能でも構造体は作製できないと考えられる.従って,MIMで適用できる金属粉末の粒径および製造できる構造体スケールが限られてくる.

そこで本研究では,ナノスケールの粉末を微細転写成形に適用できる新たな成形法を提案した.本研究ではその成形法の一つとして遠心成形法を提案し,その効果を調査した.遠心成形法は昔からある古い成形法であり,高比重な粉体を遠心力により成形型の底部に沈降させることができ,成形型への負荷が少なく均等に充填できるという特徴を有している.この特徴を利用して現代でも複雑な中空形状を有する大型のプラスチック製品や中空円筒形状のコンクリートを製造するのにも使用されている.これ以外にも,アルミナ粉末を用いた遠心成形に関する研究論文が見られ,粒度分布の異なる粉末を遠心成形により均質化させ,安定した密度を有する成形体を作製するのに用いられている.粉末を用いた遠心成形はこれ以外にも多々見られるが,金属粉末をマイクロスケール構造体に転写させる成形方法として遠心成形を取り上げた論文は一切見られない.本研究では,この遠心成形法によりマイクロおよびナノスケールを有する金属粉末を使用して,作製した微細構造体への金属粉末の充填挙動を調査した.また遠心成形に重要な製造条件との関連性から金属粉末の転写性を評価し,この製造方法の有効性とナノスケールの粉末の適用可能性を調査検討した。