μ-MIM技術ニュース Vol.39

精密金属射出成形(μ-MIM) 技術ニュースレター
Micro Metal Injection Molding Technical Newsletter

「金属射出成形 技術ニュースレター」は、金属射出成形に関する開発・設計者向けの技術情報をお伝えする技術ニュースレターです。印刷の上、ぜひ貴社内でご回覧ください!

1. MIM の素朴な疑問にお答えします!

先日 MEDIX に出展しました。事前の情報発信のかいもあり、多くの皆様にブースにご来場いただきました。その中で、MIMに関する基礎的なお問い合わせを多くいただきました。技術ニュースや WEB サイトを通して、MIM に関する技術情報を広く発信してきていますが、今回は MEDIX でいただいた疑問に答える形式で、MIM の基本情報について発信します。

MIM に関する疑問集①(成形方法)

Q. 樹脂が混錬されている材料を焼結した場合、焼結品は多孔質になり、強度・密度は下がらないのか?
A. 強度・密度ともに下がりません。
MIM は、バインダーと呼ばれる樹脂材料と金属粉末を混錬した材料を使用して成形しますが、焼結前に脱脂と呼ばれる工程があるため、最終製品は金属製品になります。脱脂・焼結工程中に、製品のサイズが等方向に収縮するので、空隙が発生せず高密度な金属部品を得られます。

MIM に関する疑問集②(寸法精度)

Q. 寸法精度はどの程度が可能となるか?
A. 10μm以内の精度も可能です。
焼結工程が入るので、MIM による加工精度は高くないと考えられていますが、一般的な MIM 製品で±0.5%程度となりますが、我々のμ-MIM 技術では±0.1%の精度の実現が可能です。

MIM に関する疑問集③(幾何公差)

Q. 面粗度はどこまで達成可能か?
A. Ra0.3~1 程度で、追加工により、さらに低い面粗度も可能です。
使用粉末に均質な微粉末を用いることで焼結工程後 Ra 0.3 程度が可能ですが、通常の金属部品と同じく様々な後加工が可能ですので、二次加工で更なる表面粗度を達成することも可能です。

MIM に関する疑問集④(生産量)

Q. 最大月産数量は?
A. 月産 100 万個の実績があります。
最大生産量は、製品のサイズによりますが、サイズが小さく(数mm程度)、形状が複雑で、数量が数万個~数十万個/月の製品において、最も有益です。

MIM に関する疑問集⑤(材料)

Q. 白金の実績はありますか?
A. 実績があります。
切削では加工が難しいとされる白金を、金属射出成形に代替することで、精度よく量産することが可能です。ただし、白金粉末は反応性が高いため、当社では独自開発バインダーを使用し、白金の微細部品の生産に成功しています。

MIM に関する疑問集⑥(ギア)

Q. ギアのモジュール・等級は?
A. 3級程度のギアは追加工無しで作製実績があります。
追加工なしで機械加工と同等の精度を出すことができます。さらに異形状のギア(内歯ギアやヘリカルギア、ベベルギア)に対する加工であれば、切削よりも MIMの方が精度良く量産ができ、モジュールは0.05以下の実績もございます。また、一般的な表面処理等の仕上げを行うことも可能です。

MIM に関する疑問集⑦(ノズル)

Q. ノズルの最小穴径を教えて下さい。
A. 数十μm 台の穴径が可能です。
ノズル長にもよりますが数十m の加工が可能です。微細なノズルの成形を行う場合、全体のサイズが数~十数mm程度の製品が多いです。これは、数十mm以上のノズルを MIM 生産する場合、材料費が高くなり他の加工方法と比べコストメリットを出すのが難しくなるからです。さらに、弊社が独自開発した金型技術を用いる事で、異型のオリフィスや分岐・自由曲線を持った流路にも対応できますので、微小ノズルの量産を検討されている方はお問い合わせください。

今後も MIM に関する基礎知識は適宜配信をしていきます。

2. チタンフォーム技術がタイの国家学術調査委員会に表彰されました!

タイ国家学術調査委員会とは、タイ国内の経済発展、社会開発とグローバルな知的貢献を担う機関で、当社とタイ国立MTECのDr. Anchaleeとの共同研究であるチタンフォーム開発プロジェクトが、工業部門の 2 位に選出されました。チタンは、高温中の活性が高いので、機械強度のある多孔質体を作製する事が困難です。今回の表彰を受けたチタンフォームは、高純度なチタン製多孔質体を得る事に成功したものです。チタン特有の高い耐食性や高比強度を活かし、かつメタルフォームの持つ高圧縮性を実現したので、生体適合材や電極材、航空宇宙産業の用途で採用が検討されています。

<今後の展示会・学会 予定>
2017 年 7 月 先端加工技術マッチングフェア

太盛工業の社員が語る今月のコラム

昨年 12 月に入社しました反田 健治(そりだけんじ)と申します。入社してまずは品質管理部にて製品の知識をつけ、今年の4月から製造部に所属しております。先日は製造の担当として、展示会の MEDIX に参加しました。これまで外部の環境に触れることがなかったので、MIM がまだまだ世間に知れ渡っていないことや、どの業界でもダウンサイジングが叫ばれる中で、当社のμ-MIM はそのニーズに対応できるという面で、他の MIM メーカーに比べて、太盛の製品は非常に小さいことを実感することができ、市場に対して大きな価値を提供できるのではないかと感じました。現在は、経験豊富な上司・先輩に助けられながらの毎日ですが、世界一のMIMメーカーになるという弊社の目標に向かい、私自身精一杯勤めていきますので、よろしくお願いします。