TECHNIQUE 技術ニュースレター
μ-MIM技術ニュース Vol.43
精密金属射出成形(μ-MIM) 技術ニュースレター
Micro Metal Injection Molding Technical Newsletter
「金属射出成形 技術ニュースレター」は、金属射出成形に関する開発・設計者向けの技術情報をお伝えする技術ニュースレターです。印刷の上、ぜひ貴社内でご回覧ください!
1.薄肉部品は μ-MIM におまかせ
どのような加工においても薄肉形状部品の製作は熱変形の影響や、力学的な変形の影響を受けやすく、チャッキング・位置決めが困難なケースも多く、精度の確保も含め、製造が極めて困難です。しかしながら、小型化・軽量化のニーズから薄肉形状部品が求められる事は、どの業界からも多くなっています。
MIM においても薄肉部分は脱脂・焼結時に歪みが発生し易く、二次加工が必要になったり、金型への充填自体も困難で通常の MIM による製作では不可能なケースが多くなります。しかし、MIM という工法のメリットや特徴を考えると薄肉形状、微細形状への対応が今後絶対に必要であると太盛工業では考え、10 年以上前から、自社独自技術であるμ-MIM において、部品の薄肉化を重要テーマとして研究開発を進めてきました。
① 原料ペレットでのブレークスルー
下写真は太盛工業のμ-MIM の SEM 像です。かなり極端な例になりますが、最薄肉部分で 5μm 以下の構造体が得られており、従来の MIM では不可能な形状となっています。通常の MIM 原料ペレットでは金属粉末の粒径は数十ミクロンとなり、500μm 以下の形状を得ることは現実的ではありません。太盛工業では要求される形状・精度に合わせて、原料粉末の粒径をコントロールし、独自開発したバインダ系で流動性を確保することでこの課題に対応しました。
②金型・成形技術でのブレークスルー
通常の MIM 技術では、製品の一部に0.5mm の厚みとその数倍の肉厚部分を含むような製品でも安定して製造することは困難です。その要因の一つとして挙げられるのが原料の流動特性によるものです。通常のプラスチック射出成形においても、薄肉形状は難易度の高い ものですが、MIM の原料ペレットは樹脂単体の原料に比べると流動性は低く、さらに金属材料を多く含んでいるので、熱伝導率が高いため、金型からの冷却によって充填段階で、さらなる流動性の低下が起こり、より難易度の高い成形となります。このような材料特性から MIM の成形では成形時に、より高度な金型設計と成形条件出しでのノウハウを必要とします。太盛工業では創業以来、プラスチックの射出成形で培ってまいりましたこれらのノウハウに加えてこれまでの技術ニュースでも紹介させて頂いてまいりましたMIM 材料に適合させた成形シミュレーションからの最適な金型設計などを含めて、多角的なノウハウの集積から下図のような最薄部 0.1mm 以下、全箇所で肉厚 0.2mm を下回るようなμ-MIM 部品も様々な流路形状で実現しております。薄肉部品のお困りごとは是非お問い合わせ下さい。
2.軟磁性材料の工法転換
磁力を保持する力が小さく、透磁性が大きい材料のことを軟磁性材料と呼びます。軟磁性材料は磁場の影響下では強く磁化されますが、磁場が存在しない場合は磁力を持たない性質を持ち、多くの業界で利用される付加価値の高い機能性材料です。
軟磁性材料の部品は主に家電機器やコンピューター関連の事務機器、あるいは一般産業機器部品として採用されており、現在では各種空油圧機器、自動車エンジンの燃料噴射装置の電磁弁をはじめとして、ソレノイドコア、インジェクタコア、プランジャー、トルクセンサコア、各種センサー等、さまざまな用途で用いられています。特に軟磁性部品の中でも、高精度や微細形状を要求される部品の多くは、現状切削加工や粉末冶金法を用いて製作されていますが、課題も数多く存在しています。そこで太盛工業では MIM による磁性部品の開発に取り組み、実用化に至る所まで漕ぎ着けることができました(経済産業省 サポイン採択)。MIM 技術で製造する事で特に磁気歪を気にする事なく、複雑形状への対応、大ロットへの対応、MIM 技術特有の磁性・非磁性材の複合部品の一体化など、ネットシェイプでの軟磁性部品製造へ応用することができ、緻密な軟磁性部品を高精度で製作可能です。軟磁性部品の工法転換は是非お任せ下さい。
<今後の展示会・学会 予定>
2017 年 12 月 大阪モーターショー
2018 年 1 月 オートモーティブ展
太盛工業の社員が語る今月のコラム
皆様、こんにちは。入社 4 年目、28 歳、独身、金守康太郎(かなもり こうたろう)と申します。タイでのニックネームはナモーです。今年の春より、駐在員としてタイ工場へ赴任しています。当初は不安もありましたが、持ち前の環境適応能力で今ではすっかりタイに馴染んでいます。趣味はタイの文化に見識を深めることです。最近は言語の勉強がてらタイのドラマにはまっており、今見ているのは「クーカム」というタイでは有名な作品です。日本軍人とタイ女性のお話ですが、色んな意味での日本とのギャップが面白いのでタイにご興味のある方は是非ご視聴ください。写真はタイの楽器でピンイサーンと呼ばれるものです。道で弾いている人を見かけて、あまりの格好良さに衝動買いしてしまいました。ギターのような外観ですが、音階がタイ独自のものになっており適当に弾いてもタイっぽくなる優れものです。タイの話しかしていませんが、好きなものは好きだから仕方がありません。